逢坂


    

逢坂(日仏学院の脇を登る坂、学院に入る角に「堀兼の井」がある。

 昔、奈良時代のころ,小野美佐吾という人が武蔵守となって赴任したとき、
ここにさねかづらという絶世の美女が住んでいたのを、美佐吾が思いそめ、
家に引き取ってからは、かたときも離れないほどであった。年月がたち、
任をおえて勅命により都へ帰り、若草山のふもとに住むようになったが、
さねかづらのことが忘れられず、日ましに思いがつのって床にふすようになり、
「自分が死んだら、さねかづら住む近くへ葬ってくれ」と言い残して死んだ。

しかし遠国のこととて家人も遺言通りにはできず、若草山のふもとに葬って、
そこを武蔵野と名づけた。一方、さねかづらも美佐吾との別れを始終悲しみ、
「もう一度あわせてください」と神に祈願したところ、正夢の神のお告げによって、
この坂へきて美佐吾を待っていると、昔とかわらぬ姿であらわれ、
夢うつつの中でしばらく語り合うことができたが、やがて消え失せてしまった。

それよりこの坂を逢坂と名づけたという。さねかづらは生きていてもしかたがない
と思い、坂下の池に身を投げて死んだという。


掘兼の井 昔、ここに住んでいた男が、後妻の讒言を信じて、罰としてわが子に井戸を掘らせたが、幼いために掘ることができないで死んでしまったという。

戻る
inserted by FC2 system